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トップ板の変形

 リペアで弦高が高いので低くしたいという依頼は多いですがネックを調整しても弦高が下がらない事があり ます。ボディーに付いたブリッジの位置がトップ板ごと盛り上がってしまっている場合、サドルを限界まで 下げても弦高は落ちません。なぜこうなってしまうかと言うと弦を張ったまま長時間放置放置すると弦の張 力でブリッジが引っ張られ、変形してしまうからです。木は長時間引っ張られ続けるとその引っ張られた位 置に留まってしまいます。盆栽は枝に当て木をしたりおもりをぶら下げたりして枝の位置を調整しますよね。 この状態を「腹が出てる」などと言いますが中年のおじさんにとってもギターでも良いことはありません。 クラッシックギターでもよく見られますがブリッジが剥がれることもあります。アコースティックギターは 弾かない時は弦を緩めることをお勧めします。楽器屋さんにギターを買いに行き「試奏してもいいですか ?」と聞いてみて、チューニングをして渡してくれ、試奏が終わるとまた弦を緩める楽器屋さんは商品の ギターを大切にしていると思えます。

 多くのメーカーはクレームになることを想定しトップ板を厚くするとか力木を太くするなど対応策が考えら れていると思いますが少数生産の工房などでは鳴り重視でトップ板を薄くしたりブレーシングを部分的に細 くしたりしている所もあります。マーチンでもブレーシングを細く改造してある物をたまに見かけます。こ のようなギターでの弦の張りっぱなしはトップ板の腹出現象が加速します。

 このような状態で持ち込まれたギターは最小限のリペアでなるべく元の状態に戻るように考えます。初期 段階ではまずトップ板の矯正をします。ブリッジ、ピックガードは剥がして作業します。ボディーの内側 から木部に霧吹きで水分を含ませ曲げたい方向に圧力を掛け、特殊なアイロンで熱を加えながら固定しま す。数時間後、アイロンの電源を切り固定したまま冷却します。この方法を数日、場所を変えながら 少しずつ変形した場所を伸ばしていきます。変形の度合いによっては数ヶ月かかることもあります。 矯正が終わるとブレーシングとトップ板の剥がれが無いか確認し、剥がれがある場合は接着します。 問題がなければ、トップの塗装が熱で痛んでしまいますので塗装を剥がし塗り替えます。稀にですがブ レーシングの状態が悪いとバック板を外してトップの修理をすることもあります。ボディーを修正した のに弦高が下がらない場合ネックからボディを外しネックのセット角を変えることもあります。

 ボディーやネックの分解は非常にリスクが高く音質を損ねる場合もありますのでお勧め出来ません。 木部の分解には高温のスチームを使用しますが、ニカワで接着されたギターは比較的簡単に分解出来るの ですが最近はマーチンでもボンドに変わしまったので剥がれにくいです。分解に時間を掛けてしまうと木部 のダメージも大きくなります。リペア料金も非常に高価になります。

 このように苦労してボディートップを修理してもまた弦を張りっぱなしの状態で放置しますと元の状 態に戻ってしまいます。変形してしまったギターは環境や材質などで変形し易かったとも考えられます。 1年以内に同じ状態に戻りクレームで帰って来ることが数回ありました。戻って来たギターは100%弦は緩め てありません。酒飲みの人が肝臓が悪くなり、入院して完治したら少しお酒は控えると思います。ギターが 修理から帰ってきたらやはり弦は緩めた状態で保存し、労わってあげましょう。